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「9回裏2アウト満塁、バッター、4番ピッチャー 長曾我部君」
ザリとホームグラウンドを踏みしめる。
頬を伝い落ちる汗もそのままに、泥に汚れたバッドをそのまま一振り二振り。
丁寧に足場を馴らすと、鋭い目でマウンドに立つ男を見据える。
ホームランならサヨナラ逆転勝ち・・・。
握った拳に一息。
腰を下ろし中段に構えたところで、目の前の男が深いため息を落とした。
蒸れるのだろうか。
右目に巻かれた眼帯を擦りながら、
「なーにが9回裏2アウトだ。今から始めんのになんだその絶体絶命的な設定は」
しかも4番ピッチャーって。
「チームのエースで大砲かよ。長曾我部君とか自分でナレーションすんなって」
「ぅわ、雰囲気台無し!ブチ壊し!どうでもいいだろーそんな細かいことは!!」
「ハイハイハイ!ならば拙者、2番でサードが良いでござる!!」
「あのねー、言っとくけど9人もいないから。4人だから。何番とか関係ないから」
「だから慶次も誘おうって言ったのによー」
「それでも5人だろ」
キャッチに座っていた幸村が立ち上がるのを宥めながら、元親は再びピッチャー政宗をにらみつける。
使い古された・・・、政宗の自宅の倉庫の中から引っ張り出してきたバッドは少し小さい。
よく使っていたのは幼少の折、引っ込み思案だった元親に試合観戦に来てくれと何度頼んだか知れない。
格好いいところばかり見せたくて、とにもかくにも我武者羅に振って、打って、走って、スライディングして、捕って、守った記憶もまだ新しい。
元親は忘れてしまっているかもしれないが・・・、今は引っ込み思案だったという片鱗すら見せぬ少年の手に握られたバッドを静かに見つめ政宗は思う。
「どうせならオマケにフルカウント付けてもいいぜー?長曾我部君、果たして大逆転の希望となるか!?速球派最速スピード145km伊達君の球を見事観客席に叩き込めるか!?」
「そんな球放れるなら俺こそチームのエースじゃねぇか。つーか無茶苦茶過ぎ」
「何々~?チカってばホームラン宣言~?」
「佐助の頭を越すでござるよチカ殿!!」
「おっしゃ気合入った!バッター勝負だ政宗!」
「いや、聞けよ人の話し・・・」
これ以上コイツに何を言っても無駄、か・・・。
白球をグローブの中で浅く握る。
意識が落ちる。
振り上げた手に、ひどく力がこもった。
「しまっ・・・!」
投げる、というよりは抜けるという感覚。
定位置よりも高めの角度から放られた白球は、明らかな危険球。
あわや頭部に直撃か、と思われた。
が、聞こえてきたのは予想に反した甲高い音だった。
キンと伸び響く。
一文字にきられたバッドの風圧。
白球が、空を舞う。
「・・・なっ・・・」
「ホームランです!長曾我部君、危険球を見事打ち返しサヨナラです!!」
「・・・だから自分で実況しちゃ駄目でしょーチカ」
「怪我はござらぬかチカ殿!」
草むらに消えていく白球。
軌跡を追った視線を元親に返せば、そこには満面の笑み。
「俺に打ち返せない球なんて、ないぜ」
よく言う。
今のは打ち返したというよりも叩き伏せたのが正しいだろう?




>>甲子園見てますかー?叶斗はこの季節になると必ず見てますねー。全試合は見れずとも、一日必ず一試合は・・・。
高校球児!!いいですね!!(毎年言ってる)
高校野球見てると異様におお振りを読みたくなるから不思議。(ぇえー・・・)


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