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ただいま草木も眠る丑三つ時。
都会外れの市街地は、すべての明かりが落ち、時折通る車の音だけが響いてくる。
良い子も悪い子も、大概の人は眠りにつく頃、それでも彼らのテンションは異常だった。
真っ暗にした部屋の中、ぼんやりと照らし出されるブラウン管の光、それに映し出される四人分の顔。
一番前に陣取る佐助は、背後の異なった声を聞きつつ疑問を隠せない表情でコントローラーを握っていた。
「で、そこを右に曲がるでござるよ」
「てか最初から攻略本とか駄目だろー。面白く無くねぇ?」
佐助の右隣には、攻略本片手に(意外にも)的確にナビゲートしていく幸村が。
元親は家主の左隣に座り込み、全員分のコーラを新しく注ぎ足している真っ最中だ。
・・・最初、この家に誘ったのは幼馴染である幸村だけだったはずだ。
しかし、やはりというべきかかの幼馴染が他にもと言わないわけは無く必然的に同じクラスの元親がくっついてきた。元親のオプションに政宗が玄関先に現れたのも想定の範囲内だ。それはいい。
幸村を誘う=いつものメンバーなので、ジュースもお菓子もそれ用にそろえておいた。佐助の細やかな気遣いもいつものことだ。
だが、その佐助も今は想定の範囲外の状況に陥っていた。
いやまさかこれは予想してなかったんだけど・・・?
「で、そこでムービーが入るでござる」
「や、だから言うなってー、楽しくねぇだろ」
「・・・!!」
幸村、元親、政宗の反応順である。
淡々と攻略本を読み上げる少年を嗜める元親。
その後ろのベッドに・・・、枕を抱いた政宗の姿が。
佐助愛用のピローは哀れ、くしゃくしゃに抱きつぶされている。
画面いっぱいに映し出された狂ったように笑う少女の姿に、枕を抱く腕がびくりと跳ねたのが見えた。
・・・あれぇ?
「でもそうしないといつまでも話が終わらないでござる・・・」
「それが楽しいんだって!!ホラーゲームなんだからいつ何がどこであるなんて分かってたら面白くねぇだろうが」
「それでも先が早く知りたいのでござるよ!!」
「大丈夫だって旦那。一回クリアしたことあるからルートは覚えてるよ」
「おお!流石佐助!」
幸村の感心した声に重なるかのように、女の不気味な声がブラウン管から漏れ始めた。
どうやら戦闘となってしまったらしい。
不気味な様相で主人公に襲い掛かってくる女に、背後の背後で息を呑むか細い悲鳴が聞こえた。
無論、記すまでも無く政宗だ。
いっそ助け舟を出したくなるまでに萎縮した政宗の姿に、普段のような尊大な雰囲気は流れていない。
釣りあがった目は限りなく下を向き、開けば人をあざけるような言葉しか出てこない口も今は一文字に閉じられ、大きな体はその存在をかき消さんばかりに縮こまってしまっている。
・・・まさか政宗がこういうの苦手だったなんて・・・。
怖がってる相手をからかうようなポジションを想像していたために、そのギャップは佐助の目に大きく写った。
・・・かわいそうに・・・と思いつつも、ゲームを止められないのは両側でエンディングを待ち構えている二人が居るからだ。
それに今ここで仮にゲームを止めて真に困るのは、怖がっている政宗自身だろう。
ゲームに興味がそがれた瞬間、その目は背後の彼へと向けられる。
たかだか作り物におびえている彼に、だ。
・・・その態度が日頃高慢な分、この二人に何を言われるのかは想像に難くない。
やめてほしいかもしれないが、ひいては完全にこのゲームをクリアすることが両側の少年達の目を引いていることが、彼のためにもなるだろう。
・・・というのは半分建前で、あと1、2時間おびえる政宗の気配を背後に受けるのもいいかな、というのが佐助の本心であった。
たまには、こういうのも悪くは無いだろう。

安心しろ、気づいているのは俺だけだ。







>>学園BASARAホラーゲーム大会in佐助宅。
心霊駄目な政宗、ぜんぜん平気な幸村、信じてない元親、ゲームはゲームとドライな佐助。
やってるゲームは「零 紅い蝶」のイメージで・・・。
タイトルに意味はありません。(笑)
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